小売業店舗におけるIoT活用方法とは?得られるメリットと導入効果
小売業店舗において、CRM※1・業務効率化・店舗の最適化は至上命題です。店舗DXを実現するためIoTを活用し、どのように効果を上げていくのか?その全容に迫ります。
※1 CRM(Customer Relationship Management) = 製品やサービスを提供する企業が、顧客と様々なタッチポイントを経由して親密な信頼関係を築くこと。顧客体験などを向上しロイヤルティを深めることで、リピーターからファン、ファンからインフルエンサーになるような活動を行うこと
小売店舗におけるIoTの役割
小売業店舗におけるIoTの役割は大きく以下のように分けられます。
データの収集
・来店客数や行動データ・広告視聴率・混雑情報など、お客様の情報をIoTゲートウェイに集約
・在庫数量や欠品情報など、発注に関わる情報をIoTゲートウェイに集約
・什器の温度や外気温・内部気温など、エネルギー管理の為の情報をIoTゲートウェに集約
・各種サーバで収集した情報をクラウドサーバに集約
データの分析・見える化
・IoTゲートウェイが集約したデータをエッジ処理し、加工された状態でクラウドサーバに送信
・クラウドサーバでデータを蓄積・分析・可視化
データの活用
・ウェアラブルデバイスやPC・スマホで、可視化されたデータを閲覧・使用する
・分析されたデータをもとに、マーケティング活動を変える
・緊急性の高い情報をウェアラブルデバイスや、遠隔地に即座に届ける
・取得した情報を需要予測・自動発注・在庫管理などの各種システムに連携する
機器の制御
・AIにより什器・空調などの温度設定を適正なものに維持し続ける
・販促・広告などの映像や売価などの情報を各種機器に表示させる
・各種IoT機器により業務の自動化・省力化を実現、顧客・従業員共に満足度を高める
・レジ業務自体をお客様にやってもらう
・クリーンスペースを実現する
データを収集する
小売業店舗において、IoTを活用することでどのような情報を収集できるのかを紹介します。
お客様の情報
カメラやセンサからデータを取得することで、来店客数カウントや、お客様の店舗内回遊の状況、年代、性別、どの棚の前にどれくらいの時間滞留していたのか等、の情報を取得することが可能です。
これらの情報をマーケティング施策や広告レポートに活用したり、店舗内の従業員の業務効率に活用したりと、幅広い活用用途があります。
もちろん、これらの情報も個人情報となるため、映像データなどは個人を特定できない形にエッジ処理で加工しサーバに渡すことが必須です。
発注に関わる情報
什器にマットを置くだけ、電波吸収材を活用した電子タグに商品を載せる、定点カメラの映像を使う、ロボットを使うなど様々な手法で、在庫・欠品数量を即座に把握できます。これにより棚卸業務の軽減などの効果も期待できます。
温度や電力消費等の情報
冷蔵ケースの温度や、店舗内の温度を温度センサ等で取得することで、無駄なエネルギー有無を情報としてインプットができます。同時に常に最適な温度を保つことで、品質の担保や顧客満足度にもつながります。
他システムから関連情報を収集し組み合わせる
十分実用に足るIoTゲートウェイの情報ですが、POS・会員アプリ・CRM・サイネージ・ロボット・需要予測・自動発注・本部システム等、分散している情報をサーバ間連携で組み合わせることも可能です。
組み合わせることで新たな情報として更なる効果を生み出すこともできます。サーバ間連携にはMDM※2が必要なため一朝一夕で実現することは困難ですが、IoTのデータの活用はそれほどの価値があると言えます。
※2 MDM(Master Data Management) = 企業で使用しているデータの定義を合わせ、統合することで、各種システムに散らばっているデータを一元管理し、活用するための土台を作ること
データを蓄積・分析・見える化する
データの分析・見える化の肝はエッジ処理です。
全てのデータをクラウドサーバに送信して処理してしまうと、ネットワークを圧迫したり、クラウドサーバのコストが高騰したり、リアルタイム性が失われたりします。
特に、小売業店舗の全店に強固なネットワークを敷くことは、コスト・手間の面からも中々困難です。
そのため、IoTゲートウェイのエッジ処理を活用することで、極力ネットワーク内にデータを流さないよう、情報を取捨選択・加工することでミニマイズすることが肝要です。
また、緊急性の高い情報はクラウドサーバを経由せず直接ウェアラブルデバイスに通知することが出来るのもIoTゲートウェイのメリットと言えます。
そのデータをクラウドサーバで蓄積し続けることで、価値のあるデータに生まれ変わります。
まずは「今」の見える化による業務効率化等のメリットを享受し、その次は蓄積された「過去」のデータを分析することで、「未来」に繋がる価値を享受することが出来ます。
収集したデータを活用する
ウェアラブルデバイスやPC・スマホで、可視化されたデータを閲覧・使用する
・レジ待ちが増えてきたらスマートウォッチに通知
通知を受けた担当者が速やかにレジを空けることで、レジ待ち時間を短縮する
・冷蔵ケース等の温度異常が発生したら、店舗内スタッフ・本部に通知
担当者は即座に対応が可能となる
・欠品が発生したら店舗内スタッフに通知しつつ、本部システムに連携
店内在庫から補充することで機会ロスを抑えたり、翌日の発注量を調整する
・ロボットが撮影した実際の棚割りを本部に連携
本部スタッフが店舗の棚割り実態を把握し、改善施策を打つ
・レジ前混雑情報を本部・店舗担当者が把握
店舗毎の人員の過不足を把握し人員配置等の改善に役立てる
・POPや売価のエラーチェック結果をスマートウォッチや本部に通知
店舗スタッフが是正する
など
店舗の状況をリアルタイムに、より深く把握することで、顧客満足度向上につながる対応を即座に打つことが可能となります。
分析されたデータをもとに、マーケティング活動を変える
・棚前滞留時間を分析
よく手に取られる商品・手には取られるが購買には至らない商品などを特定し、品揃え・売価設定・棚割りなどに活かす
また、導線を阻害するような滞留があれば、店舗レイアウトなども見直す
・来店客の性別・年代などを分析
店舗毎の来店客の傾向を把握し、エリアマーケティングやブランディングに役立てる
・サイネージのコンテンツ毎の視聴状況を分析
販促・ブランディング施策の改善に役立てたり、広告レポートに活用する
・来店客数を分析
時間帯別購買率などの情報を店舗作り・キャンペーンに活用する
さらに、会員データベースやPOSデータなどのデータを加味することで、より鮮明に店舗内のお客様の行動を知ることが可能となります。
緊急性の高い情報をウェアラブルデバイスや、遠隔地に即座に届ける
不審者の侵入等、防犯上の問題が発生した際に、速やかに通知することが可能となります。
取得した情報を需要予測・自動発注・在庫管理などの各種システムに連携する
在庫・欠品情報を需要予測・自動発注・在庫管理などのシステムに連携することで、適切な発注管理が可能となります。
他のIoTデバイスを制御する
AIにより什器・空調などの温度設定を適正なものに維持し続ける
取得した外気温・内部温度・設定温度等の情報を活用し、AIが適切な温度設定・ON/OFFを実現します。
それにより、エネルギーコストを削減するだけでなく、空調調整という業務も削減できます。
IoT機器により業務の自動化・省力化を実現
・自動で在庫・欠品情報を収集し、自動発注システムと連携することで、欠品対応・棚卸・発注業務等の削減ができる
・ロボットの活用で、店舗清掃やPOP・売価・欠品の確認を自動化できる
最近では、品出しまで可能なロボットも登場している
・電子ペーパーに売価を自動表示・更新することで、棚札設置等の業務をなくすことができる
販促・広告などの映像や売価などの情報を各種機器に表示させる
電子ペーパーに売価情報を自動表示させるだけでなく、レシピ情報へリンクするQRコードや、商品レビューなどを表示することで、お客様の買い物体験をより良いものにします。デジタルサイネージに販促情報を流すだけでなく、広告を流すことで、広告収益を得ている企業も増えています。
なお、広告を流すためには、画像認識から視聴計測を行うためのエッジ処理が必須になってきています。
レジ業務自体をお客様にやってもらう
レジに掛かる時間をできる限り削減することで小売店舗にとっても来店客にとってもメリットがあることは明らかです。このレジ業務を削減するためのIoTサービスが登場しています。
・カートに入れながら商品読み取り、決済まで終わらせレジが不要になるスマートカート
・お客様自身で商品をスキャンすることで、レジ業務が不要かつ、レジ待ち時間も短縮できる無人レジ
・バーコードスキャンなしの商品読み込みを可能とする、カメラによる画像認識やRFID
・スマホをゲートにかざし入店し、商品を取って店を出るだけで自動決済までできる店舗
(複数の技術要素が活用されています)
自動的にクリーンスペースを実現する
自動ON/OFFする紫外線照射により、手間なく自動的にウィルスを殺菌し、クリーンスペースを実現できます。
IoTで得られるメリットと導入効果
今回紹介したIoTソリューションにより得られるメリット・導入効果をまとめると以下の通りです。
マーケティング活動の改善
・お客様の行動データ・属性データなどを取得し、お客様のことを更によく知る手助けとする
店舗業務の軽減
・在庫・欠品の自動把握により、棚卸業務を削減
・更に自動発注と連携することで、発注業務を削減し、在庫発注数量自体が適正化
・ロボットによる清掃や自動殺菌装置により、清掃・殺菌業務が削減
・ロボットによるPOP・売価checkにより、確認業務が削減
・電子ペーパーにより、棚札の差し替え業務が削減
・冷蔵ケース内の温度を自動的に適温に保ち、異常があったら即通知される
顧客満足度向上
・混雑状況をスタッフに通知することや、レジなし決済など、レジ待ち時間のストレスが軽減
・企業が来店客のことをよく知ることで販促物や店舗づくりが適正化され、顧客の買い物体験が向上
その他
・AIによりエネルギーコストを削減
・緊急時にスマートウォッチで即通報
さいごに
今回は、小売業店舗におけるIoTについて整理してみました。
小売業店舗においては、店舗業務の軽減のためのIoT機器が大幅に増えてきています。
しかし、マーケティング活動改善におけるIoT活用はまだまだこれから、といった印象です。
小売業店舗は、多種多様な業務が複雑に絡み合うことで成り立っており、DX化が進みにくかった領域です。しかしIoT機器も進化してきており、少しずつ小売業店舗の業務を代替できるようになってきました。
皆様の身近にある小売業店舗がどんどんIoT化してきて、近未来のような店舗が生まれてくるのが楽しみです。
当社では、企業様が抱えるビジネス課題を解決するサービスとして、IoT技術を用いた製品・ソリューションの企画・設計・製造から、運用・保守までをワンストップでサポートしております。
また、当社では小売業店舗に特化して、本当の意味で効果のあるデジタルサイネージの運用を実現すべく活動しております。
IoTソリューションや小売業店舗でのデジタルサイネージに関して、疑問や解消したい課題などございましたら、こちらからお気軽にお問合わせください。
お役立ち資料
当社のIoT技術を活用したデジタルサイネージ「CELDIS」の業種別・用途別活用事例集です。デジタルサイネージの導入をご検討中の企業様はご一読下さい。