製造業におけるDXの進め方とは?“最初の一歩”を成功させるためのヒント
製造業におけるDXはどのように進めれば良いでしょうか?「DXに取り組まなければ」と考えていても、何から手をつければ良いのかがわからず、後回しになってしまう企業も多いかもしれません。
この記事では、製造業におけるDXの進め方、DXの最初の一歩を成功させるためのヒントをご紹介します。
世界から遅れる日本の「デジタル競争力」
[図1:日本のデジタル競争力ランキングは?]
日本のデジタル競争力の低下が話題となっています。「IMD世界デジタル競争力ランキング」の2023年版によると、日本のデジタル競争力ランキングは2022年の29位からランクを3つ下げた32位となり、2017年の調査開始以来過去最低となりました。
同ランキングの1位には米国、2位にオランダ、3位にシンガポールが入り、東アジアでは韓国が6位、台湾が9位、香港が10位にランクインしました。
このランキングでは、デジタル技術をビジネス、政府、社会における変革の重要な推進力として活用する能力と態勢を、国・地域ごとに測定、比較しています。世界における日本のデジタル化、DXの遅れが表れています。
▼IMD世界デジタル競争力ランキング2023年版
https://www.imd.org/news/world_digital_competitiveness_ranking_202311/
迫る「2025年の崖」 DXとは?
[図2:「2025年の崖」概要]
※画像:経済産業省「DXレポート」(サマリー)より
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略です。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」では、DXの定義を以下のように紹介しています。
『企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ
内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら
第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して
新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して
ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し
競争上の優位性を確立すること』
▼DXレポート~IT システム「2025年の崖」の克服と DX の本格的な展開~(PDF)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
現在起こっている、またはこれから起こる顧客や市場の変化に対応するために、そして変化の中で国内や世界で企業の競争上の優位性を確立するために、DXが必要とされています。
日本の多くの企業では、古くなったITシステム(レガシーシステム)を抱えています。レガシーシステムは、技術面での老朽化や、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化などの問題を抱えており、その結果、経営・事業戦略上の足かせとなり、高いコスト構造の原因となっています。
既存のビジネスを問題なく遂行できていても、データを最大限に活用した新たなデジタル技術を適用していくことができず、その結果、新たなニーズに対応できずに競争力を失っていくのです。
経産省は、このままDXが進まなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘しており、このことを「2025年の崖」と呼んでいます。
DXの本質「システムの刷新ではなく、ビジネスの変革である」
2020年、経産省は「DXレポート2 中間とりまとめ」を公表しました。レポートでは、コロナ禍で多数の企業が仕事の仕方に変化を迫られた中、日本の多くの企業ではDXが進んでいないことを明らかにしています。
▼DXレポート2(中間とりまとめ)(PDF)
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-2.pdf
レポートでは、古いシステムを刷新することがDXではないことを強調し、DXの本質とは「事業環境の変化へ迅速に適応する能力を身につけ、その中で企業文化(固定観念)を変革し、レガシー企業文化から脱却すること」であるとしています。
コロナ禍での事業の危機に対し、デジタル技術を用いてどのように対応し、ビジネスを変革することができたのか。これは、企業のDXへの取り組みのバロメーターとして参考になるでしょう。
製造業のDXを進めるためには?
[図3:DXを進める方法のイメージ]
DXの進め方として、DXレポートでは、
・デジタイゼーション
・デジタライゼーション
・デジタルトランスフォーメーション
の3つの段階で進められると解説しています。製造業の場合を例にとり、それぞれを見ていきます。
◆デジタイゼーション
デジタイゼーションでは、アナログ・物理データの単純なデジタルデータ化を行います。例えば、製造装置を電子化することが挙げられます。
ここでは、将来のソフトウェア化を見据え、シミュレーションや遠隔での制御が可能な製造装置を導入します。
◆デジタライゼーション
デジタライゼーションでは、個別の業務・製造プロセスをデジタル化します。例えば、製造プロセスのソフトウェア化が挙げられます。
ここでは、職人が行ってきた技術をデータ化するほか、製造プロセスをシミュレーションする製品を導入します。
◆デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーションでは、全体の業務や製造プロセスをデジタル化し、顧客起点の価値を創出するための事業やビジネスモデルの変革を行います。例えば、製造を遠隔化することなどが挙げられます。製造を遠隔化することで、技術者が移動することなく、顧客に近い拠点で製造が可能となり、それによって納期の短縮を実現します。
「工場機器の自動化」でDXを考えると
[図4:自動化の進む工場のイメージ]
製造業の工場では、日々の作業を少ない人数で効率的に行うべく、自動化が行われています。機器の自動化にはシーケンス制御が用いられます。シーケンス制御は「機器の動作をあらかじめ定められた順序または手続きに従って制御の各段階を逐次進めていく制御」と定義されます。
自動化にはリレーと呼ばれる、電気信号を物理的な動作に変える装置が用いられていましたが、現在は「PLC(プログラマブルロジックコントローラ)」と呼ばれる、ソフトウェアによって制御を行う装置が主流となっています。
PLCを土台として、機器を自動化するだけでなく、品質の高い製品を低コスト・短期間で製造するほか、業務プロセスを改善して最適な方法を見出すなど、付加価値の高い生産を可能とする「スマートファクトリー」が実現します。
製造業DXにIoTソリューション導入を
[図5:IoTソリューション導入の進め方とポイント]
ホワイトペーパー「IoTソリューション導入の進め方とポイント」は、製造業のDXを進めるに当たって参考となる
・業務改革の進め方
・業務改革のTips
・DXの進め方
・DXのTips
・IoTソリューション導入の進め方
の各ポイントについて、それぞれわかりやすく解説した資料です。図を活用したわかりやすい資料は、DXを進めるに当たり有力な参考となるでしょう。
▼【ホワイトペーパー】IoTソリューション導入の進め方とポイント
製造業DXの“最初の一歩”に ウェアラブルデバイスを活用する
[図6:Cygnus2(シグナスツー)概要]
ウェアラブルデバイスCygnusは、工場の機器と人間をつなぐコミュニケーションの役割を担います。
工場機器のアラートをすばやく共有
工場を自動化する場合、機器が発信するアラートに気づきにくくなる場合があります。少ない人員で工場を稼働させることにより、機器の異常を察知して対応するまでに時間がかかり、製造のロスにつながることがあります。
この課題を解決するために、作業者がウェアラブルデバイスを装着することで、作業に集中していても、機器のアラートに即時に気づくことができるようになります。
さらに、画面上に対応する人員や対応方法などを明示してメンバー間で共有することで、対応への時間短縮につながるだけでなく、突発的な対応への混乱による他の作業への影響を最小限に抑えることが可能となります。
小さな成功体験をつくろう
コロナ禍を乗り越えた現在、差し迫った危機として考えられるのは少子高齢化による労働力人口の減少です。製造業の現場は早急にこの危機に対応することが求められます。新しいビジネスを創造するためにも、課題を見定めて、着手できるところから取り組み、小さな成功体験をつくることが、事業の成長につながります。
DXのファーストステップとして、Cygnusなどのウェアラブルデバイスを導入し、情報の共有やデータの連携を行うことは、DXの最初の一歩として取り組みやすく、その後の短期的・中長期的な取り組みへの架け橋となります。
その他、DXをサポートするIoTの活用方法については、こちらにまとめています。ご参考ください。
お役立ち資料
IoTソリューション導入の具体的なステップや要点を紹介しつつ、IoT導入を具体的に進める際に使えるTipsも紹介いたします。IoT導入プロジェクトでお悩みの方はご一読ください。