大手老舗百貨店オフィスへのAIrux8導入 空調電力25%削減を実現できた理由

株式会社トラース・オン・プロダクトは2024年、AIによる電力削減ソリューション「AIrux8(エーアイラックスエイト)」を、大手老舗百貨店の本社ビルに導入しました。
前回の記事では、AIrux8導入の結果、AIrux8稼働前の5月と稼働後の6月を比較し、全体で空調電力の25%を削減することに成功したことをご紹介しました。AIrux8とは何か?そして導入結果の詳細については前回の記事をご覧ください。
▼【省エネ事例紹介】空調電力25%削減 大手老舗百貨店オフィスへのAIrux8導入結果
https://www.tranzas.co.jp/column/airux8_casestudy03/
今回の記事では、大手老舗百貨店の本社ビルでAIrux8によって空調電力を削減できた理由を深掘りしてご紹介します。

オフィスの2つの領域~ペリメーターゾーンとインテリアゾーン~
オフィスの空調環境を考えるとき、一般的にオフィス内を2つの領域に分けることができます。1つは「ペリメーターゾーン」、もう1つは「インテリアゾーン」です。
ペリメーターゾーン~外気温の影響を受けやすい場所~
[図2:ペリメーターゾーンのイメージ]
ペリメーターゾーン(Perimeter zone)とは、境界または境界近辺の領域を指します。ペリメーターゾーンは建設・空調用語で「日光や外気温など、オフィス室外からの熱の影響を受けやすい場所」を表しています。窓際などは季節や時間帯によって暑さ・寒さが変化しやすい場所であり、オフィス内では専用の空調が設置されているところも多くあります。
インテリアゾーン~空調の効果が大きくなる場所~
[図3:インテリアゾーンのイメージ]
インテリアゾーン(Interior zone)とは、内部の領域を指します。インテリアゾーンは建設や空調用語では「オフィス室外からの影響を受けにくい場所」を表しています。ペリメーターゾーンとは逆に、日光や外気温の影響を受けにくく、空調の効果が大きい場所であり、ペリメーターゾーンの空調とは別の空調が使用されます。
オフィスのエアコン3種~ペリメーターエアコン・セントラルエアコン・個別エアコン~
オフィスビルの室内では、2つの領域(ペリメーターゾーンとインテリアゾーン)を考慮した空調設計が行われています。空調の種類として、以下の3つに分けることができます。
ペリメーターエアコン~ペリメーターゾーンの空調を制御~
[図4:窓際にあるペリメーターエアコンのイメージ]
ペリメーターエアコンは、ペリメーターゾーン、つまり窓際などの外気温の影響を受けやすい場所で稼働するエアコンです。オフィス内の窓際をよく見ると、温風や冷風が吹き出す吹出口が設置されているのを見かけた方も多いのではないでしょうか。これは「ペリカウンター」と呼ばれています。夏は熱が入りやすく、冬は冷気が入りやすい窓際に空調を設置することで、外気の影響を緩和する役割を担っています。
セントラルエアコン~ビル全体の空調を制御~
セントラルエアコンとは、ビル全体を中央管理室などの一か所で制御する空調設備を指します。オフィスビルや商業施設などの規模の大きい建物で広く採用され、ビル全体やフロアごとに制御することができるため、広いスペースの温度を均一に保つことができるほか、メンテナンスにかかるコストを抑えられるなどのメリットがあります。一方で、システムによっては細かい運用設定ができないなどのデメリットもあります。
個別エアコン~設置した場所周辺を個別に制御~
[図5:個別エアコンのイメージ]
個別エアコンとは、フロアごとおよび部屋ごとに設置し、設置した場所の周辺の空調を制御するエアコンです。フロアごとおよび部屋ごとに温度設定・風量調整をする一般的な業務用エアコンを思い浮かべていただければ良いかと思います。
個別エアコンでは、セントラルエアコンでは手の届かないような細かい温度設定・風量設定ができるため、設置した場所の空調を快適に調整することができます。一方で、多くの個別エアコンは自動制御ではありません。人の手によるON/OFFの切り替えや温度・風量の調整を行う必要があり、人手がかかるデメリットがあります。
大手老舗百貨店オフィス 各種エアコンごとに消費電力を比較
今回AIrux8を導入した大手老舗百貨店オフィスでは、ペリメーターエアコン、セントラルエアコン、個別エアコンの3種類のエアコンが設置されていました。AIrux8は、6階および7階のオフィス内の3種類すべてのエアコンに設置し、AIrux8稼働前と稼働後の各エアコンの消費電力を比較し、それぞれのエアコンの消費電力の変化を調べました。
前回の記事で、出社人数が多い日で消費電力を比較したパターンを見てみましょう。比較対象に選んだ5月29日(水)と6月7日(金)では、
・平均気温:22~22.1℃
・平均湿度:70%前後
・体感温度:21.4~21.5℃
・天気:曇り後晴れ、または晴れ時々くもり
・人の活動量:26.5~26.6%
と、よく似た条件の日でした。全体の消費電力を見ると、5月29日(水)は866,124ワット、6月7日(金)は585,884ワットとなり、32.4%の削減に成功しました。
比較結果~個別エアコンの消費電力削減に大きな効果~
[図6:エアコン種別ごとの削減効果の内訳]
結論として、図6のようになりました。6階・7階のペリメーターエアコンの消費電力が微増していることが分かります。その一方で、6階の個別エアコンの消費電力が37.6%、7階の個別エアコンの消費電力は60.7%それぞれ削減されたことが分かります。
つまり、消費電力削減に有効な方法として、ペリメーターエアコンやセントラルエアコンの稼働をより最適に調整し、個別エアコンを本当に必要な箇所のみに限定して使用する方針が考えられます。
言い換えれば、ペリメーターエアコンとセントラルエアコンの稼働を最適に調整できていれば、個別エアコンを稼働させなくても十分である場所・機会が予想以上に多くあることが分かりました。個別エアコンの最適な調整を人の判断や運用でまかなうことは難しいとも言えるかもしれません。
AIrux8の役割は「空調の自動最適化」
[図8:AIrux8導入前から導入後までのイメージ]
オフィスの電力消費の約72%は空調・照明の電力消費と言われています。無駄に電力が使われている、または空調が過剰に稼働しているところがどこであるかを見つけようとしても、実際には人の目では分かりにくい場合が多くあります。今回の導入結果によって他フロアへの拡大導入につながり、今後さらに多くの消費電力削減が期待されています。
AIrux8は、IoT機器を使用してオフィス、工場や商業施設など、それぞれの場所の特徴をつかみ、空調電力の自動最適化を図ります。人感センサーやAIを活用し、データをもとに客観的に解析した結果を空調運用に適用することで、これまでにない電力削減を実現します。
最新のIoTテクノロジーによる省エネ対策を行うことで、持続可能な社会への貢献だけでなく、経営に大きなインパクトをもたすコスト削減も可能になります。当社は、今後もAIrux8の導入をさらに拡大してまいります。

お役立ち資料

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