【省エネ事例紹介】空調電力25%削減 大手老舗百貨店オフィスへのAIrux8導入結果

当社、株式会社トラース・オン・プロダクトは2024年、AIによる電力削減ソリューション「AIrux8(エーアイラックスエイト)」を、大手老舗百貨店の本社ビルに導入しました。この記事では、今回の取り組み内容と結果についてご紹介します。

電力削減ソリューション「AIrux8」とは?
[図1:AIrux8のイメージ]
AIrux8とは、様々なIoT機器をAIによって自動制御し、空調と照明の電力使用量を削減する集中コントローラー装置です。電力消費を実状況に合わせて適正値に自動制御し、人の混雑状況に応じて環境を最適化することができます。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
▼【省エネ事例紹介】電力削減29.6%を実現 株式会社クレア慶徳工場へのAIrux8の導入結果
https://www.tranzas.co.jp/column/airux8_creare_casestudy01/
独自アルゴリズムが空調エネルギー量を予測
[図2:AIrux8管理画面のイメージ]
AIrux8は、天井に設置された人感センサーを組み込んだ「Node(ノード)」と呼ばれるセンサーを通して、施設内の混雑状況や空間温度などの環境データを取得します。取得された環境データは、特許を取得した独自のアルゴリズムにより、空間の温度斥力にマッピングされ、空調の温度変化で消費されるエネルギー量を事前に予測します。
この予測によって、部屋の最適な温度変化がどのくらいかを知ることが出来ます。
また、直感的にわかりやすいAIrux8の管理画面を通して、視覚的に消費電力の削減の様子を見ることができます。
アルゴリズムの特許取得についてはこちらをご覧ください。
▼AI電力削減ソリューション「AIrux8」の技術が日本で特許として登録
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000062901.html
省エネ実現のために、今回行ったこと~提案・導入・利用状況調査~
ここでは、大手老舗百貨店への導入に当たり行ったことをご紹介します。
大手老舗百貨店では、電気料金をはじめとした昨今のエネルギー価格の高騰に伴い、SDGsへの積極的な取り組みを検討されておりました。それをきっかけとして、当社のAIrux8での電力削減についてご相談いただきました。
ビル内の施設図面や空調設備等の各種情報を元に、AIrux8における最適な導入シミュレーションを行い、ROI計算を実施。また、施設内の従業員の皆様が快適に業務を行えるよう、消費電力を抑え、かつ、適温を保つ空調の自動制御の運用方針を提案。2024年3月に大手老舗百貨店本社ビルの一部エリアへ導入が完了しました。
空調の利用状況のヒアリングでは、オフィスの利用時間、始業時間、終業時間、エアコンの設定温度や平日・休日の人の動向を確認。さらには施設の警備員の方々の動向も確認し、エアコンの運用状況を調査しました。その後、執務室・会議室・休憩室など、同じ空間タイプの場所で分け、それぞれの場所の傾向をつかみました。
これらの調査や分析が、AIrux8の力を最大限に発揮させるために重要な情報を提供します。
導入結果~3つの削減効果について~
今回、大手老舗百貨店本社ビルの以下の場所にAIrux8を導入しました。
・6階休憩所エリア
・7階オフィスエリア
(合計対象面積:900平方メートル)
各場所に設置後、すぐにAIrux8を稼働させたわけではありません。5月中は各データの情報収集を行い、6月から稼働しました。それにより、稼働前の5月と稼働後の6月の消費電力を比較することが可能となります。
また、5月と6月の消費電力を比較するに当たり、気温や湿度などの条件が似た日どうしで比較することも重要です。今回は、その条件項目として、
・平均気温、平均湿度、降水量、天気概況(気象庁のデータ)
・体感温度(ミスナール体感温度(※2)より算出)
・人の活動量(AIrux8のNodeから取得)
※ミスナール体感温度:室温・湿度・風速の3つの要素から体感温度を計算する方法
を選びました。
それでは以下にて、3つのパターンに分けて結果をご紹介します。
パターン1:出社する人が少ない日で消費電力を比較
[図3:出社する人が少ない日で消費電力を比較]
こちらのオフィスでは、木曜日・土曜日を休日とする従業員の方が多いことが分かっています。5月30日(木)と6月8日(土)では、人感センサーによる人の活動量はともに10%台でした。それぞれの比較項目を見ると、
・平均気温:22.5~22.8℃
・平均湿度:70%前後
・体感温度:22~22.1℃
・天気:晴れ後くもり
・人の活動量:13.8~19.3%
と、よく似た条件の日であることが分かります。
そして消費電力を見ると、AIrux8稼働前の5月30日(木)は613,970ワット、稼働後の6月8日(土)は474,042ワットと、22.8%の削減に成功しました。人の活動量ではむしろAIrux8稼働後の方が多いにも関わらず、消費電力は減少していることも注目です。
パターン2:出社人数が多い日で消費電力を比較
[図4:出社人数が多い日で消費電力を比較]
次に、出社している従業員の方が多い日ではどうでしょうか?今度は木曜日や土曜日以外で比較しますが、こちらのオフィスでは特に水曜日・金曜日が通常出勤日とされており、出社する人が多いことが分かっています。空調の稼働も比較的多くなります。
比較対象に選んだ5月29日(水)と6月7日(金)では、
・平均気温:22~22.1℃
・平均湿度:70%前後
・体感温度:21.4~21.5℃
・天気:曇り後晴れ、または晴れ時々くもり
・人の活動量:26.5~26.6%
と、よく似た条件の日でした。消費電力を見ると、5月29日(水)は866,124ワット、6月7日(金)は585,884ワットとなり、32.4%の削減に成功しました。パターン1と比べると、活動量が多く、空調電力消費が大きいほど、AIrux8の効果も大きくなっていることが分かります。
パターン3:空調をあまり使用しなかった日で消費電力を比較
[図5:空調をあまり使用しなかった日で比較]
最後に、空調をあまり使用しなかった日どうしで比較しました。
5月15日(水)と6月4日(火)は、どちらも空調をほとんど使用していなかった日です。比較項目を見ると、
・平均気温:19.4~19.5℃
・平均湿度:75~76%
・体感温度:19.2~19.3℃
・天気:薄曇り、または晴れ
・人の活動量:21.3~29.3%
と、条件は似ており、これまでの比較パターンに比べると気温が低いことが分かります。人の活動量では、6月4日(火)の方が多い状況です。両日の消費電力を見ると、5月15日(水)は291,078ワット、6月4日(火)は267,731ワットと、8%の削減に成功しました。空調の稼働が少ないながらも消費電力が削減されていることが分かります。
導入結果を受けて
このように、半年間の実証運用の結果、全体で空調電力の25%を削減することに成功しました。その結果、大手老舗百貨店様での取り組みにおいて、導入エリアを拡大することが決まり、今後さらなる空調電力の削減に貢献してまいります。
今回ご紹介した省エネ事例は、以下のプレスリリースでも発表いたしました。あわせてご覧ください。
▼「AIrux8」、大手老舗百貨店の本社ビル空調電力25%削減に成功、大手老舗百貨店のSDGsへの取り組みと共に導入エリアの拡大へ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000062901.html
AIrux8はなぜ省エネを実現できるのか?
[図6:AIrux8導入前から導入後までのイメージ]
さて、実証運用の結果としてご紹介した3つのパターンでは、なぜ、どのような仕組みで空調の電力の削減が行われたのでしょうか?図6はそのヒントを示しています。
次回のコラム記事では、今回の実証運用を通して分かったことについて、さらに深掘りしてお伝えします。

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