【実証実験結果】商品評価を実店舗で見える化 「店舗の星」はなぜワイン・酒に効果大なのか?

2024年7月30日
Pocket
【実証実験結果】商品評価を実店舗で見える化 「店舗の星」はなぜワイン・酒に効果大なのか?

当社トラース・オン・プロダクトは6月20日、千葉県を中心に展開するスーパーマーケット「Y’smart」(ワイズマート)で行った流通小売店向けDX製品「店舗の星」の実証実験結果を公表しました。今回のコラムでは、その結果についてご報告します。

売れる商品棚を作るDX店舗活性プロダクト「店舗の星」
売れる商品棚を作るDX店舗活性プロダクト「店舗の星」
店舗の星は、商品に関する消費者評価(ソーシャルプルーフ)をネット上よりクラウドエンジンがスクレイピングし、リアル店舗に落とし込み表示する為のシステムです。

流通小売店向けDX製品「店舗の星」とは?

図1:店舗の星の構成イメージ

[図1:店舗の星の構成イメージ]

店舗の星は、スーパーなどの小売店舗に電子POPとして掲示する端末と、クラウド上で動作するシステムから成り立っています。

現在インターネット上には、店頭に並ぶさまざまな商品への消費者からの評価・口コミがあふれています。店舗の星クラウドシステムは、それらの評価を「スクレイピング」によってインターネット上から収集し、店頭に掲示する端末に星を表示し、商品の評価を表します。つまり、星の評価が高い(=星の数が多い)ほど、インターネット上での消費者からの評価が高いと言えます。星の表示が多い商品を購入した場合、商品への満足度も高く、購入に失敗しにくいと言えるでしょう。また、商品の評価はさまざまなWEBサイトから収集しているので、偏った評価になりにくいと考えることができます。

トラース・オン・プロダクトでは、2020年から「ネット上に点在する消費者評価を集め、リアル店舗の商品に対してその消費者評価を“見える化”する技術」について研究を重ね、2023年に特許を取得。OMO戦略の根幹となる価値の高い技術として認められています。

インターネット上の商品評価を収集「スクレイピング」とは?

図2:システム開発のイメージ

[図2:システム開発のイメージ]

スクレイピングとは、「こする」「かき集める」といった英語「Scraping」に由来する言葉です。WEBスクレイピングは、WEBやデータベースなどインターネット上にある情報を広く探り、特定の情報について必要な部分を抽出し、データを収集することを指します。

店舗の星は、スクレイピングによって収集したデータをもとに、シンプルな5点満点の星評価に落とし込み、陳列棚の前で商品を選ぼうとしているお客様に、誰から見てもわかりやすいように商品の評価を提示します。

スクレイピングについてより詳しく紹介した記事は、下記に記載していますのでご覧ください。

▼スクレイピング技術を活用した特許取得のDX店舗活性プロダクト「店舗の星」とは

https://www.tranzas.co.jp/column/dxscraping/

リアルとバーチャルを統合するマーケティング戦略「OMO」とは?

OMOとは、「Online Merges with Offline」の略称です。「Merge」には併合する、統合する、融合するといった意味があり、直訳するとオンラインとオフラインを統合すること、となります。店舗の星のように、オフラインである実店舗で買い物をする際に、オンライン上にある商品評価を参照して商品を買うことも、その一例です。

ECの利用機会が増え、キャッシュレス決済が進み、インターネット上で顧客の購買行動などのデータを集め分析できるようになったことで、実店舗とECとの垣根が小さくなっています。今後さらに両者が融合し、OMO関連の技術・サービスが増えていくことが予想されます。

実証実験はどのように行われた?結果は?

それでは、「Y’smart」で行った実証実験の内容についてご紹介しましょう。

「ワイン・酒」コーナーと「ドリンク」コーナーで1ヶ月間実施

[図3:Y’smart店舗での「店舗の星」設置例]

トラース・オン・プロダクトと株式会社ワイズマートは、千葉県・神奈川県の「Y’smart」3店舗で1ヶ月間実証実験を行いました。店舗の星を取り付けたのは、「ワイン・酒」コーナー及び「ドリンク」コーナーで、取り付けた端末数は合計192枚。店舗の星を付ける商品と付けない商品に分け、それぞれの販売数量の前後伸長率比較を実施しました。

インターネット上から収集した消費者評価は比較的高評価のものが多く、店舗の星の平均表示点数は4.6点でした。

「ワイン・酒」コーナーで見られた高い効果

結論として、実証実験により、「ワイン・酒」コーナーで店舗の星による高い効果が表れた結果となりました。「ワイン・酒」コーナーにおいて、店舗の星を付けた商品と付けなかった商品の販売数の伸長率を比較すると、店舗の星を付けた商品の伸長率は付けなかった商品に比べて63%増加し、最も効果が低かった店舗でも伸長率が23%の増加となりました。

なぜ高い効果が出たのか?

それでは、なぜ「ワイン・酒」コーナーで高い効果が出たのでしょうか?

考えられる要因は、「ワイン・酒」という商品の特性にあります。「ワイン・酒」のコーナーでは、お客様が商品を購入しようとする際、銘柄の選択が難しく、選べない(=買えない)状況が発生しがちです。皆さんも、良いお酒を買おうとして陳列棚の前で長い時間迷った経験がありませんか?

・安すぎず高すぎない商品であり、購入したいが失敗はしたくない

・購入することで確実な満足を得たい、何らかの良い影響や変化を期待したい

・商品の種類が多く、どれを選べば良いかがわからず決められない

このような商品に対して、店舗の評価が大きな助けになっていることが、今回の実証実験で改めて示されました。特に、店舗の評価で消費者から高い点数を得ている商品の効果は顕著でした。

お客様から評価をいただいているにも関わらず、選択が難しい商品、つまりワインの人気商品に対して効果が高かったと考えられます。

店舗の星が効果を発揮する商品については、下記の記事で詳しく紹介しています。

▼小売DXのカギ握るリテールテックとは?「店舗の星」が効果を発揮する商品紹介

https://www.tranzas.co.jp/column/retailtech_tenpostar/

「ドリンク」コーナーの結果は?

図4:店舗の星を付ける前(緑)付けた後(赤)の販売数量の変化例

[図4:店舗の星を付ける前(緑)付けた後(赤)の販売数量の変化例]

一方で、「ドリンク」コーナーにおいては、販売数量の前後伸長率は最大で15%増加、最小で10%減となり、それほど目立った効果は見られませんでした。ドリンクはお客様がよく知っている商品が多く、最初から買いたい商品が決まっていることもあり、店舗の星を参考にせずに購入していることが伺えます。

しかし、ドリンクにおいても、新しく登場したばかりで流行の兆しがある商品など、活用の仕方次第で効果を発揮する可能性があるかもしれません。今後の国内での本格展開でさまざまな事例が明らかになっていくでしょう。

実証実験の考察・今後の展開は?

店舗の星は、2023年より海外の大手小売店舗で運用を開始しました。海外は、日本の商品を知らないお客様が多い環境であると言えます。良い商品を買いたいとの思いで来店したお客様が、日本の商品を目の前にしたとき、店舗の星の評価は大きな助けとなっていました。

今回の実証実験により、「嗜好品」や「選択に迷いの発生する商品」への店舗の星の効果は、日本国内においても非常に高いことが示される結果となりました。

今後の展開について

トラース・オン・プロダクトでは、「店舗の星」が最も効果を発揮するのは、他の店舗では取り扱っていないユニーク商品、例えば、プライベートブランド(PB)商品や店舗で調理したお弁当やお惣菜などに対して、実際に購入したお客様のリアルなご意見が反映された形、つまり、お客様評価の見える化であると考えています。現在、日本全国の複数の流通小売店舗様から「店舗の星」の実証実験をお申込みいただいています。今後も店舗の星の経済効果及び社会効果の検証を継続的に進めてまいります。

さらに、「店舗の星」の効果を最大化するため、店舗に来店されるお客様から直接商品の評価を得ることができるよう、流通小売店舗様の既存会員アプリにアドオン可能な「お客様レビューアプリ」の開発も開始する予定です。

今後の展開については、またコラムでご紹介してまいります。

今回紹介した実証実験については、下記プレスリリース記事でもご覧いただけます。

▼ワイズマートとの「店舗の星」実証実験の実施結果及び本格的な国内展開の開始決定のお知らせ

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000062901.html

売れる商品棚を作るDX店舗活性プロダクト「店舗の星」
売れる商品棚を作るDX店舗活性プロダクト「店舗の星」
店舗の星は、商品に関する消費者評価(ソーシャルプルーフ)をネット上よりクラウドエンジンがスクレイピングし、リアル店舗に落とし込み表示する為のシステムです。

 

お役立ち資料

IoTソリューション導入事例集
IoTソリューション導入事例集

IoT技術の活用が進む業界における当社事例をまとめた資料です。IoTソリューションを活用して新たなビジネスや製品開発をご検討中の企業様は是非ご覧ください。

資料ダウンロード