IoTゲートウェイとは?業務効率を変える注目のIT
IoTゲートウェイが産業のIoT化を加速するシステム構築の要になってきています。本記事では、これからのIoT時代に欠かせない存在となる、IoTゲートウェイとは何か、その役割は何か?ということを、わかりやすく解説していきます。
IoTゲートウェイとは?はじめに知っておきたいこと
IoTゲートウェイとは、 IoT製品」とそれらが収集したデータの送信先である「クラウド」の2つの間に入り、各種動作の制御と情報の共有などを担う機器のことです。
そもそもIoTシステムの構成要素は、「デバイス」「ネットワーク」「ゲートウェイ」の3つがあります。
ここでいうデバイスとは、センサやコンピュータコンピュータ端末などのことを指し、データを収集して送信したり、他の機器を制御するための命令を遠隔で送ったりする機器のことで、ネットワークはそれらのデバイスがデータを送信したり命令を送ったりするための通信技術のことです。
ゲートウェイは、そうしたデバイスとネットワークを繋ぐためのルータのような役割を果たす機器のことを指します。昨今のデバイスには、通信モジュールが搭載されてWi-FiやBluetoothなどさまざまな規格の通信に対応した機器が多くなっています。これらの機器は直接ネットワークと通信をおこなえるものも多いのですが、大規模なIoTシステムを構築す
る場合、大量のデバイスそれぞれに高度な通信機能を備えたものを用意するとコストも多くかかりますし、デバイスによっては通信プロトコルが異なるといった問題も発生します。
そこで、ゲートウェイを接続してインターネットとの通信の一元化やプロトコルの変換やなどをおこなうことが求められるようになっています。
近年、様々な製品・サービスでIoT化が進み、多種多様なモノがインターネットに接続して情報のやり取りを行うことができるようになってきました。そんな産業のIoT化が進むなかで、情報のシームレスな送受信やIoTによって接続された機器の制御などが必要になったため、IoTゲートウェイは欠かせない存在となっています。
例えば、IoT機器にはこういうモノがある。-IoT機器の種類-
まずIoT機器といっても、様々なカテゴリ・分野で使用されており、それぞれで用途・利用場面も変わってきます。ここでは、まず一例としてIoT機器をご紹介した上で、IoT機器が共通して持つ機能について確認します。
IoT機器は、例えば以下のようなものがあります。
①腕や指に装着して使う小型の端末で、家電などの遠隔操作や業務効率化を実現できる、「ウェアラブルデバイス」。
②複数のIDやパスワードを一元管理し、扉の施錠・解錠などを1つで行える「鍵」のIoT機器。
③気温・湿度から人の呼吸量・脈拍・機器の圧力・傾きなど、様々な情報を取得できる「センサー」
④センサーで作物の状況・環境の変化を読み取り、自動で適切な水・肥料・農薬の散布を行ってくれる農業用ロボット。
⑤ガス・電力・水道などの使用量をリアルタイムに把握可能な「スマートメータ」
⑥インターネットに映像を共有し、不正侵入防止や導線把握、顔認識などを可能とする「ネットワークカメラ」
⑦運転スキルやドライバーの心拍数、移動距離などの情報をリアルタイムに把握したり、スマホから遠隔駐車を可能とする「スマートカー」
この様に、IoT機器は様々な場面で多種多様な用途・目的をもって使われています。そんな中でも共通していることはどれも『インターネットに接続されている』という点です。これにより、IoT機器で収集されたデータは外部のクラウド等に送信され、利用者の情報、行動パターン、製品の利用場面などのデータが新たな製品開発やマーケティング活動などに活用されているのです。
IoTゲートウェイの特徴
通常、データ形式や通信プロトコルなどが異なるシステム同士ではデータをやり取りすることができません。
異なる仕様のシステム同士を繋ぎ、データのやり取りをするためには「ゲートウェイ」と呼ばれる中継機が必要とされます。IoTそんなゲートウェイのなかでも、IoT機器とクラウドの間のデータのやり取りを中継するものを「IoTゲートウェイ」と呼びます。
ゲートウェイの機能は、ネットワークの境目に設置され複数の機器を1つの回線でインターネットに接続する「ルータ」と似ています。ルータは受け取ったデータの通信経路を決
定する機能を持っていますが、ゲートウェイはネットワークを中継する機器全般を指す名称です。
IoTゲートウェイとIoT機器の接続は、無線でおこなわれることが一般的です。
工場や倉庫などの広い場所では、センサやデバイスなどの複数のIoT機器をIoTゲートウェイと接続するのに1つ1つを有線で繋ぐことはあまり現実的ではありません。そこで、Wi-FiやBluetoothなどをはじめとする無線通信が活用されます。
一方で、IoTゲートウェイとインターネットの接続は有線・無線どちらでもおこなわれます。
こちらは、可能な環境であれば通信の安定性などを鑑みて有線接続がおすすめです。
IoTゲートウェイの役割
IoTゲートウェイの役割は主に3つあります。
1つ目は、IoT機器(センサ・デバイスなど)のデータをインターネットサーバへ中継することです。
例えば、取り扱うデータ形式が異なるなどさまざまな仕様をもつ複数の センサ からデータを収集し、それらをIoTゲートウェイが中継してインターネットサーバに送信することが可能になります。
2つ目は、IoT機器(センサ・デバイスなど)の管理・制御をすることです。
IoT機器からインターネットサーバへデータを中継するのとは反対に、サーバ側からIoT機器を制御することもできます。具体的には、遠隔地からデバイスに指令を出して操作をし
たりデータを管理したりといったことが可能になります。
いずれの場合も、「IoT機器とIoTゲートウェイ」「IoTゲートウェイとインターネットサーバ」の間における通信条件が異なるために、IoTゲートウェイでは中継過程でシステム間の情報をやり取りするためにプロトコルの変換をおこない、通信を可能にする役割を担っています。
前述のように、IoT機器はインターネットに接続することで、離れた場所にあるモノを操作したり、インターネット経由で情報を受信したり、蓄積した情報を送信したりできますが、これらの機能を使うにあたり重要になってくるのが、機械・モノへの指示や、情報のやり取りが如何に円滑に「シームレス」に行えるか、ということです。
シームレスとは、『繋ぎ目のないこと』を意味し、ここでいうシームレスとは、「途中で滞り無く、一貫して円滑に機器の制御やデータの送信先、システム上の情報の処理が行われている状態」のことを指します。つまり、シームレスに現場とシステムを繋ぐことができることで、業務の効率化が図れるようになるのです。
更に、IoT化を実現するためには、専用の情報処理プログラムを実行する必要があります。これが1台の機器で実現されることで、産業のIoT化が促進されるのでしょう。この役割を担っているのが、IoTで収集したデータをゲートウェイとして集約しコントロールする「IoTゲートウェイ」になります。
また、これらの2つに加えて、近年では3つ目にエッジコンピューティングによる通信およびサーバ負荷の低減という役割もあります。
IoTシステムが普及しはじめた当初は、IoT機器で収集したデータをすべてクラウドサーバに送信に送信し、クラウド上でデータの処理・分析などをおこなうことが一般的でした。
しかし、こうしたサーバ集中型のシステム形態では、IoT機器から送信される画像・動画・ファイルなど容量の大きなデータもすべて一度インターネット通信を経由してクラウドサーバに送信しなくてはならないため、通信負荷・サーバ負荷が高くなってしまう問題がありました。
そこで近年は、クラウドサーバに送信する前にデータから必要な情報だけ取り出したり目的に応じたかたちに整形したりといった処理を加えて、通信負荷・サーバ負荷を低減する「 エッジコンピューティング 」という思想が取り入れられるようになっています。
IoTゲートウェイのなかには、このエッジコンピューティングを実現できる機能としてデータの処理・分析がおこなえる機能を搭載したものが登場しています。こうした機能を持ったIoTゲートウェイであれば、プロトコルの変換などのネットワーク中継機能だけでなく、通信の安定性を高めたり、通信を高速化したり、サーバ負担を減らしたりといったことも実現できます。
IoTゲートウェイ導入前の比較ポイント
IoTゲートウェイを導入する際は、目的に応じた適切な製品の選定が大切です。
まずIoTによって何を実現したいか目的を明確化し、どのようなIoTシステムを構築するべきか全体像を定め、それらを実現するためにどんなセンサ・デバイスを用いるのか選定をおこなったら、使用するセンサ・デバイスや接続するインターネット環境の通信規格・仕様などを確認して、それに対応したIoTゲートウェイを選定していきます。
この際、対応している通信規格・仕様以外にも、実現したいことに対して必要な機能・スペックを満たしているか充分に確認するようにしましょう。
例えば以下のようなポイントで目的に合った製品を選定することがおすすめです。
・対応している通信規格
・処理能力(CPUやメモリなど)
・インターフェイス
・セキュリティ
・拡張性
・保守運用の手軽さ
・価格
・その他、目的に応じてほしい機能
IoTゲートウェイの一般的なセキュリティ
また、忘れてはならないのがセキュリティリスクです。
特に、産業用IoTゲートウェイでは外部から不正にデータを盗み出されたり、不正操作をされてしまったりといった事故がおこならないよう、充分に気を付ける必要があります。
これまではローカルネットワークで完結していたり、あるいはそもそもネットワークにモノが接続されていなかったりした工場や倉庫など、IoT化を進めるは特にこの点のリスクが高まるので注意が必要です。
例えば、大量のデータパケットを送付して負荷をかけたり、細工を施したパケットを送信したりすることで、IoTゲートウェイの通信を遮断・改変されてしまうことも想定されます。他にも、脆弱性をついた攻撃を受けるリスクも考えられます。
セキュリティ対策を十分にするためには、IoTゲートウェイ製品のそのもののセキュリティをしっかり検討することも大切ですが、他にもIoTシステム全体を通して接続する機器・デバイスやネットワーク構成・設定などを見直すこともとても大切です。
こちらは、総務省や経済産業省による”IoT推進コンソーシアム IoTセキュリティワーキンググループ”が公開している、「 IoTセキュリティガイドライン 」を参考にされることをおすすめします。
IoTゲートウェイの活用事例
IoTゲートウェイをつかえば、これまでのようなPLCとコンピュータを挟んだ段階的なデータの受け渡し方法から、もっとシームレスなデータの送受信に移行できるようになります。
水道・電気・ガスなどの検針をスマートメータ化する
水道・電気・ガスなどのように、わたしたちが日々利用している資源・エネルギーの利用量をIoTによって遠隔地からリアルタイムで把握できるようにすることも可能です。
IoTゲートウェイを導入することで、各地に設置されたメーターから集まる測定データを一元管理化することができるようになるため、例えば水道・電気・ガスの事業者にとっては
管理の効率化に繋がります。
工場における機械の予知保全
工場には、広い敷地内にいくつもの機器・設備が点在しています。
機器・設備が故障して生産ラインが停止してしまう損失になるため、これらの機器・設備は定期的にメンテナンスしたりある程度の使用期間を終えると交換したりして、なるべく
故障が起こらないようにするのが一般的です。
近年、IoTを導入したスマートファクトリーでは、センサで機器・設備の異常を検知して、故障の予兆が出た時点でメンテナンスに入れるようにする「予兆保全」ができるようになってきています。
この仕組みは、それぞれの機器・設備から収集した稼働ログをクラウドサーバに送信して、AIなどを用いた分析にかけることで、機械が稼働する際の微妙な音・振動などの変化を見つけて異常を発見することで実現されています。
このとき、クラウドサーバに直接稼働ログを送信するのではなく、IoTゲートウェイで一度集約・処理してからクラウドに送信することで、データの一元管理化と通信負荷・サーバ負荷の低減を実現することができます。
顧客の購買行動をデータ化して活用する
スーパーマーケットやコンビニなどの小売業では、IoTの活用方法の1つとして、購買行動のデータ化とそれを分析・活用することで商品開発・マーケティングに役立てる取り組み
が期待されています。
例えば、商品棚に設置された感圧センサで在庫状況の変動を記録したり、店内に設置されたセンサやカメラで来店数・移動導線を把握したり、スマホアプリとの連動で顧客が何をいつ・何を購買したかデータを収集したりといったさまざまな方法で、顧客の購買行動がデータ化できます。
このようにして収集されたデータは膨大な容量となるため、インターネット通信をしてから処理・分析をかけていては、通信負荷・サーバ負荷ともに大きくなるうえに、時間もか
かってしまいます。
そこで、各種センサ・デバイスから収集されたデータをまずはIoTゲートウェイに一元管理化して、そこで処理を加えてからクラウドサーバに送信することで、通信負荷・サーバ負荷を軽減しながら必要なデータだけを抽出し効率的にデータを取り扱えるようにすることが可能です。
従来よりも、シームレスなデータ連携を実現
IoTゲートウェイをつかえば、これまでのようなPLCとコンピュータを挟んだ段階的なデータの受け渡し方法から、もっとシームレスなデータの送受信に移行できるようになります。
少々専門的な内容となりますが、IoTゲートウェイが無い従来型のシステムの構成では、PLC(※1)によって産業用に使われるモーションコントローラや各種機器を制御し、PLCからコンピュータを通してMES、ERP(※2)といった情報システムに対し機器から収集したデータを届けていました。一方IoTゲートウェイを導入したシステム構成では、MES、ERPなどの情報システムと全てのIoT機器をIoTゲートウェイ1台で繋ぎ、一元管理できるようにし更にシームレスな情報のやり取りを実現しています。こうすることで、従来型での制御装置の役割を果たしていたPLCが必要なくなり、更に今まで複数のPLCで制御していたのに対してIoTゲートウェイが全ての機器の制御を行ってくれるようになります。
つまり、今までは情報システムと機器の間での制御・情報のやり取りにおいて、間にコンピューターとPLCを挟んで段階的に渡されていたデータが、IoTゲートウェイを導入する事で「シームレスに」データ連携をすることができるようになります。
※1
PLC=プログラマブルロジックコントローラ。小型のコンピュータの一種で、制御装置である。動作が通常のコンピュータと違いリレー回路を原型とした動作モデルを採用しているため、巨大な機器や装置、人を運ぶ装置などの制御に用いられており、高い安全性・安定性が求められる。
※2
MES=製造実行システム。工場内の生産ラインにリンクし、機械・労働者の作業を監視・管理するシステム。
ERP=企業資源計画。経営資源を一元管理し、それを業務組織を横断しての有効活用することで、全体の利益を最大化させるシステム。
IoTゲートウェイの多様性
IoTゲートウェイは、上記で一部事例をご紹介しましたが、さまざまな業界・用途での需要が高まっています。
スマートファクトリー化の動きが高まっていることを受けIoT化が推進されている「製造業」、顧客の購買行動のデータ化や新たなプロモーション・販促方法を企画している「小売業」、取得した環境データから温度管理や農薬散布の自動化といった省人化を進める「農業」など、その活用方法はさまざまです。
こうしたさまざまな用途・目的に応じて、IoTゲートウェイは対応できる通信規格・仕様や処理能力、追加機能などさまざまな種類の製品が登場しています。
IoTゲートウェイによってどのようなメリットが得られるのか
以上のようにIoTゲートウェイが導入されることで、「一元的で」「シームレスな連携」が可能となります。この2つの役割によって、獲られるメリットには次のようなものがあります。
生産効率の向上・生産工数の削減
各種機器を制御するのに複数の制御装置が必要であったが、IoTゲートウェイを導入することにより、制御を一元化することができるようになり、生産効率の向上につながります。
産業におけるIoT化を加速
従来型のシステム構成は、各種機器を追加する毎に情報システム環境が複雑化してしまいがちですが、IoTゲートウェイを導入する事でシステム構成の複雑化の解消にもつながり、各種機器のIoT化を加速することができます。
IoT機器の導入が増えるに連れ、機器の制御や機器からの情報収集は欠かせないものになるでしょう。そのような中で、IoTゲートウェイは、IoT機器と情報システムとの連携を1台でシームレスに管理し、円滑にすることで産業におけるIoT化促進への強力な基盤作りをサポートしてくれます。
終わりに
工場でIoT機器の導入が進む現在、さらなる業務の効率化によって生産性の向上を目指す上で産業のIoT化を行うためにも、IoTゲートウェイを活用したシステム構成をご検討されてみてはいかがでしょうか。また、もっとIoTゲートウェイについて知りたいという方に向け、IoTゲートウェイの製品ページを下記からご覧いただくこともできます。
お役立ち資料
IoT技術の活用が進む業界における当社事例をまとめた資料です。IoTソリューションを活用して新たなビジネスや製品開発をご検討中の企業様は是非ご覧ください。